新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの暮らしは一変しました。中でも会社に出社せず家にいながら仕事を行うリモートワークや在宅ワークは、コロナ禍をきっかけに様々な企業で取り入れられるようになりました。とはいえ、実際に自宅で仕事をしてみると作業効率が低下してしまったり、プライベートな空間と仕事の空間をうまく分けることができなかったりと、課題が多いのも実情です。そこで今回は、リモートワークでも生産性を高めながらリラックスして仕事が行える家づくりについて考えてみたいと思います。
リモートワークを快適にするための4つのポイント
ひと口にリモートワークといってもその働き方は様々です。また、家族形態やライフスタイルによって、仕事場をどう作るかも変わってきます。単純に家の中で仕事ができるスペースを作ればリモートワークが快適になるわけではなく、これらを鑑みたうえで特に重要になってくるのが「仕事場の広さ」「クローズな空間かオープンな空間か」「仕事場の位置」「オン・オフの切り替え」の4つのポイントです。
広いリモートスペースのメリット・デメリット
まず最初のポイントとして挙げたいのが「仕事場の広さ」。当然、リモートスペースが広くなればなるほど、仕事場の環境を充実させることができます。本や書類をたくさん収納できる書庫を併設したり、奥行きのあるカウンターを取り付けたりできるのはもちろん、マルチメディア系のインフラを揃えれば家の中がオフィス顔負けの空間に!バリスタやミニ冷蔵庫を備えれば理想的なプライベート空間を楽しむことだってできます。その反面、家族との繋がり感は薄れるため、「子どもの気配を感じながらリモートワークがしたい」という人には適さない可能性が出てきてしまいます。
コンパクトなリモートスペースのメリット・デメリット
一方、階段下のスペースを有効活用するなどして、コンパクトなリモートスペースを設ける選択肢もあります。この場合のメリットとして、家族の繋がりを感じながらリモートワークができることや家全体の大きさを変えずにリモートスペースがつくれるので家づくりのコストが上がらないことが考えられます。家事や子育ての合間にちょっと仕事がしたいという人には向いているでしょう。ただし、プライバシー感は守られないため落ち着いて仕事をするのは難しいかもしれません。つまり、リモートワークの空間が広くなればなるほどプライベート感が上がり、コンパクトになればなるほど家族との繋がり感が強くなるということ。また、その中間をとって趣味や家事、子どもの勉強スペースとリモートスペースを両立させるという方法も考えられると思います。
クローズとオープンを両立するセミクローズの考え方
広さと同時にプライベート感と家族との繋がり感に大きく影響してくるのが、リモートスペースが「クローズなのかオープンなのか」ということです。個室のような閉ざされた空間は家族に邪魔されないため、電話やWEB会議が多いリモートワークにぴったり。セキュリティ面が気になる人にもおすすめですね。子どもの声や洗濯機の音など生活音が気になる場合は防音性を高めることで集中した環境がつくれますが、家事や子育てと仕事を同時進行したい人にとっては部屋の外の様子が全く分からないのも問題です。その対策として内窓でガラス一枚隔てた場所にリモートスペースを設けるセミクローズの空間にすることも可能です。集中したい時はブラインドを閉め、ふだんはオープンにする。音と視覚、クローズとオープンをうまく切り替えることで作業効率の上昇が期待できるはずです。
2階にリモートスペースをつくるのは得策ではない?
次に「家の間取りのどの位置に仕事をするスペースを置くか」という点も、快適なリモートワークを考えるうえでに必要不可欠な要素です。小さいタイプのリモートスペースがプライバシーを保ちにくいのには、階段下のリビングに直結する場所に置かざるを得ないというのも理由のひとつ。だからといって、2階の寝室に併設した書斎を仕事場として使おうとすると今度は来客の度にわざわざ階段を上り下りしなければならないため、意外と不便です。また、リラックスする場所である寝室の近くに仕事場があることで妨げになってしまうことが予想されます。それらを踏まえるとリモートスペースは玄関から近い方がいいと考えています。
土間と連携したリモートスペースという選択肢
そこで提案したいのが玄関から土間続きでつながった場所にリモートスペースを設ける案です。会社に出社するときと同じように一度靴をはくことで気持ちのメリハリもつきますし、来客の対応や子どもの送り迎えからもスムーズに仕事に切り替えることができます。そのうえ、リモートワークに伴う生活習慣の変化をこの空間に落とし込むことだって可能です。たとえば、これまで仕事帰りにスポーツジムに通っていたけれどテレワークになったことで通いづらくなった、という人はリモートスペースの一角をトレーニングルームとして活用する。趣味のバイクや釣り道具を置いてみるのもいいですね。仕事+趣味の空間として自由度の高いリモートワークの形が見えてくるかもしれません。
仕事モードに切り替えるための建築的なアイデア
リモートワークを快適にするための最後の要素は「オン・オフの切り替え」です。そもそも家というのは本来、家族が集まったり寛いだりするオフになるための場所。今までは職場に行けば自然に仕事モードのスイッチが入っていたのを、リモートワークでは家にいながら気持ちの切り替えをしなければなりません。決して簡単なことではありませんが、建築的な観点でそれを助けることができると考えています。例えば照明を変えてみる―。寛ぐときは電灯色を用いるのが一般的ですが、リモートスペースにはビジネスに合うよう白色のライティングにする。また、素材を変えるのも良い方法だと思います。畳や木目のフローリングではなく、コンクリートの土間によって、家と仕事場のメリハリをつくだけでなく、靴を履くことでも気持ちが切り替わりやすいと思います。
自分に合ったリモートスペースを作りたいならプロに相談を!
日本におけるリモートワークは始まったばかり。住宅にどのように落とし込んでいくかはまだまだ未成熟の部分が大きいです。何より働き方や家族構成、リモートスペースに求めるプラスαの要素や仕事モードに切り替える方法などを考えると、正解の形は人によって変わってきます。だからこそ、自分の理想のリモートスペースを見つけるためにまずはお気軽にご相談ください。